5分でわかる新リース会計基準のすべて|IFRS16号との違いと中小企業への影響

2026年度からの適用が見込まれる「新リース会計基準」について、自社への影響や必要な準備が分からずお困りではありませんか。本記事では、新リース会計基準の基礎知識から、国際基準であるIFRS16との違い、具体的な会計処理まで、そのすべてを専門家が分かりやすく解説します。最大の変更点である「すべてのリースの原則オンバランス化」が財務諸表に与えるインパクトや、「使用権資産」「リース負債」の計上方法も理解できます。特に中小企業の経理担当者が知りたい実務上の特例措置や、Excel管理の限界とシステム導入の必要性についても詳述。この記事を読めば、今から何をすべきか、新基準への対応の道筋が明確になります。

目次

まず結論 3つのポイントでわかる新リース会計基準

2026年度以降の適用が見込まれる「新リース会計基準」。その内容は複雑で、どこから手をつければ良いか分からない方も多いでしょう。この記事では、まず結論として、新リース会計基準を理解する上で最も重要な3つのポイントを解説します。詳細はこの後の章で深掘りしますが、まずはここだけ押さえておけば、変更点の全体像を掴むことができます。

ポイント1:原則すべてのリースを資産・負債として計上(オンバランス化)

新リース会計基準の最大の変更点は、これまで費用処理(オフバランス)が認められていたオペレーティング・リースを含め、原則としてすべてのリース契約を貸借対照表(B/S)に資産・負債として計上する「オンバランス化」が求められることです。これにより、企業の財政状態がより実態に即して表示されるようになります。

具体的には、借手はリース契約から生じる権利を「使用権資産」、義務を「リース負債」としてB/Sに計上する必要があります。旧基準との違いは以下の通りです。

項目旧リース会計基準新リース会計基準(公開草案)
リースの分類ファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類原則として分類を廃止(単一の会計処理モデル)
ファイナンス・リースの会計処理リース資産・リース債務を計上(オンバランス)使用権資産・リース負債を計上(オンバランス)
オペレーティング・リースの会計処理支払リース料を費用処理(オフバランス)

この変更により、これまでB/Sに計上されていなかったリース契約が可視化され、企業の財務実態の透明性が高まります。

ポイント2:中小企業には実務上の負担を軽減する特例措置あり

すべての中小企業がすぐに新基準へ完全対応する必要があるわけではありません。実務上の負担を考慮し、中小企業向けにはいくつかの重要な特例措置や経過措置が設けられています。

特に重要なのは、「中小企業の会計に関する指針」を適用する企業は、当面の間、現行のリース会計処理を継続できるという点です。ただし、これはあくまで経過措置であり、将来的には新基準への対応が求められる可能性があるため、動向を注視する必要があります。

また、新基準を適用する場合でも、実務を簡素化するための下記のような「簡便的な取扱い」が認められる見込みです。

  • 短期リース:リース期間が12ヶ月以内のリースについては、B/Sに計上せず、費用処理が可能。
  • 少額リース:リース資産の価値が低いリース(例:PC、コピー機など)については、B/Sに計上せず、費用処理が可能。

これらの特例を正しく理解することで、中小企業は実務負担を大幅に軽減しながら新基準に対応することが可能です。

ポイント3:財務指標が悪化?早期のシミュレーションと準備が不可欠

すべてのリースがオンバランス化されることで、企業の財務諸表には大きなインパクトが生じます。特に注意すべきは、財務指標への影響です。

貸借対照表(B/S)では、資産と負債が同時に増加するため、総資産が増加し、自己資本比率や負債比率といった財務健全性を示す指標が悪化する可能性があります。金融機関からの借入契約等で財務制限条項(コベナンツ)を設定している企業は、抵触しないか事前に確認が必要です。

また、損益計算書(P/L)においても、従来の「支払リース料」という均等な費用計上から、「使用権資産の減価償却費」と「リース負債に係る支払利息」の合計額へと変わります。この支払利息は元本残高の多いリース期間の初期に大きくなるため、費用が前倒しで計上される傾向にあります。

これらの影響を正確に把握するためには、自社が契約しているすべてのリース契約を洗い出し、新基準を適用した場合の財務諸表をシミュレーションすることが不可欠です。影響額の算定やシステム対応には時間がかかるため、早期の準備着手が成功の鍵となります。

新リース会計基準とは 基礎知識と導入背景

新リース会計基準:B/Sへの影響(オンバランス化) これまでの基準 (オペレーティング・リース) 資産 負債・純資産 現金・設備等 借入金・資本等 B/Sに計上されない (オフバランス取引) 新基準適用 新リース会計基準 (原則すべてのリース) 資産 負債・純資産 現金・設備等 借入金・資本等 使用権資産 (資産計上) リース負債 (負債計上) 見える化 ※図はイメージです。これまで簿外だったリース契約が貸借対照表に計上されます。

2023年5月、企業会計基準委員会(ASBJ)は「リースに関する会計基準(案)」(以下、新リース会計基準)を公表しました。これは、日本のリース会計における数十年来の大きな変更点であり、多くの企業に影響を与える可能性があります。この章では、新リース会計基準の基本的な内容と、なぜ今、導入されることになったのか、その背景をわかりやすく解説します。

新リース会計基準の最も重要なポイントは、これまでオフバランス処理が認められていたオペレーティング・リースを含め、原則としてすべてのリース契約を資産・負債として貸借対照表(B/S)に計上(オンバランス化)する点にあります。これにより、企業の財政状態がより実態に即して財務諸表に反映されることになります。

新リース会計基準が導入される理由

今回の会計基準改訂の背景には、大きく分けて2つの理由があります。それは「国際的な会計基準との整合性(コンバージェンス)」と「財務諸表の透明性・比較可能性の向上」です。

第一に、IFRS(国際財務報告基準)や米国会計基準では、すでに同様のリース会計基準(IFRSでは「IFRS第16号」)が導入されています。グローバルに事業展開する企業が増えるなか、各国の会計基準が異なると、海外の投資家や親会社が日本の企業の財務状況を正確に比較・評価することが困難になります。そこで、国際的な会計基準との差異を解消し、国際的な比較可能性を確保することが、今回の改訂の大きな目的となっています。

第二に、現行の会計基準では、ファイナンス・リース以外のリース契約(オペレーティング・リース)は、費用処理するのみで貸借対照表には計上されません。これを「オフバランス」と呼びます。しかし、航空会社の航空機や小売業の店舗など、事業の根幹をなす資産をオペレーティング・リースで調達している企業は少なくありません。オフバランス取引は、帳簿に現れない多額の債務を抱えている実態を隠してしまい、投資家が企業の本当のリスクを把握しにくいという問題点が指摘されていました。新リース会計基準は、すべてのリースを資産・負債として「見える化」することで、財務諸表の透明性を高め、企業間の健全な比較を可能にすることを目指しています。

いつから適用?対象となる企業とスケジュール

新リース会計基準の適用開始時期と対象企業は、企業の規模によって異なります。現時点で公表されている公開草案に基づくと、スケジュールは以下の通りです。最終的な決定は、ASBJからの正式な公表を待つ必要がありますが、早期の準備が求められます。

対象企業適用開始時期(原則)早期適用の可否
上場企業、会社法上の大会社2026年4月1日以後に開始する事業年度の期首から2025年4月1日以後に開始する事業年度の期首から適用可能
上記以外の非上場企業(中小企業など)当面は強制適用の対象外(現行基準の継続適用が可能)任意で新基準を適用可能

表の通り、上場企業や大会社は2026年度からの強制適用が予定されており、対応準備は急務です。一方、中小企業については、当面の間は現行の会計処理を継続することが認められる見込みです。ただし、金融機関からの融資審査や取引先との関係で、新基準に沿った財務諸表の開示を求められるケースも想定されるため、中小企業であっても新基準の内容を理解しておくことが重要です。

【徹底比較】新リース会計基準で何が変わるのか

2024年以降に適用が開始される新リース会計基準は、特に借手の会計処理に大きな変革をもたらします。これまで多くの企業が費用処理のみで済ませていた「オペレーティング・リース」が、原則として貸借対照表(B/S)に計上されることになるためです。ここでは、現行の会計基準や国際的な基準であるIFRS16号と比較しながら、変更点を具体的に解説します。

旧基準との違い すべてのリースがオンバランス化

新リース会計基準における最大の変更点は、これまでオフバランス処理が認められていたオペレーティング・リースが原則としてオンバランス化されることです。これにより、借手はファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区別なく、すべてのリース取引(一部の短期・少額リースを除く)を資産・負債として計上する必要があります。

具体的に何がどう変わるのか、旧基準(現行基準)と新基準を比較してみましょう。

項目旧基準(現行)新基準(公開草案)
リースの分類ファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類原則としてすべてのリースを単一のモデルで会計処理(分類不要)
貸借対照表(B/S)への計上
  • ファイナンス・リース:リース資産・リース債務を計上(オンバランス)
  • オペレーティング・リース:計上不要(オフバランス)
  • すべてのリース:使用権資産・リース負債を計上(原則オンバランス)
損益計算書(P/L)への計上
  • ファイナンス・リース:減価償却費と支払利息を計上
  • オペレーティング・リース:支払リース料を費用として計上
  • すべてのリース:原則として減価償却費と支払利息を計上
主な影響オペレーティング・リースが多い企業は、B/Sに現れない債務を抱えている状態だった。B/Sが実態をより正確に反映する一方、総資産の増加により自己資本比率などの財務指標が悪化する可能性がある。

この変更により、企業の財政状態の透明性が向上し、投資家などが企業の隠れた負債(オフバランス債務)を把握しやすくなります。一方で、企業側はこれまでB/Sに計上してこなかったリース契約をすべて洗い出し、資産・負債として評価する実務対応が求められます。

国際基準IFRS16号との違いと日本の実情

日本の新リース会計基準は、国際的な会計基準である「IFRS第16号(IFRS16)」とのコンバージェンス(収斂)を目的として開発されました。これにより、国内外の企業の財務諸表の比較可能性を高める狙いがあります。しかし、日本の実務慣行や適用時の負担を考慮し、IFRS16と全く同じ内容にはなっていません。いくつかの重要な差異が存在します。

特に注目すべきは「貸手の会計処理」です。

項目IFRS第16号日本の新基準(公開草案)
借手の会計処理原則としてすべてのリースを「使用権資産」「リース負債」としてオンバランス計上する単一モデル。IFRS16とほぼ同様。原則オンバランス化。
貸手の会計処理オペレーティング・リースとファイナンス・リースの2つのモデルを維持しつつ、判定基準などが変更されている。実務への影響を考慮し、原則として現行の会計処理を維持する。大きな変更はない。
簡便的な取扱い(免除規定)短期リース(12か月以内)と少額リース(新品時価額が5,000米ドル以下など)はオンバランス不要。短期リース、少額リースについて同様の免除規定を設ける方針。金額基準などは日本の実情に合わせて設定される見込み。

このように、日本の新基準は借手側の会計処理についてはIFRS16に準拠する形で大きく変わりますが、貸手側については現行基準が踏襲される見込みです。これは、貸手側の会計処理まで変更すると、リースを提供する企業のシステム改修や業務フローの見直しなど、社会的なコストが非常に大きくなることを企業会計基準委員会(ASBJ)が考慮した結果です。グローバル基準との調和を図りつつも、国内企業のスムーズな移行を優先した、日本独自のバランスが取られた内容となっています。

新リース会計基準が企業会計に与える影響

新リース会計基準による財務諸表への影響 1. 貸借対照表 (BS) の変化:オンバランス化 旧基準 (オフバランス) 資産 負債 純資産 リース資産の計上なし 影響 新基準 (オンバランス) 使用権資産 資産 リース負債 負債 純資産 UP 総資産・負債 DOWN 自己資本比率 2. 損益計算書 (PL) の変化:費用の分解と推移 旧基準 「賃借料」として定額計上 賃借料 (販管費) 変更 新基準 減価償却費 + 支払利息 (費用前倒し) 減価償却費 (販管費) 支払利息 (営業外) ←初期の費用負担大 営業利益・EBITDAは増加傾向 (賃借料が営業外等の費用へ移行するため)

新リース会計基準の導入は、特にリース契約の「借手」側の会計処理に大きな変革をもたらします。これまで費用として処理されてきた多くのリース契約が、企業の資産と負債として貸借対照表(BS)に計上されることになります。ここでは、具体的な会計処理の変更点と、それが財務諸表に与えるインパクトを詳しく解説します。

借手の会計処理 使用権資産とリース負債

新リース会計基準における借手の会計処理の最大のポイントは、原則としてすべてのリース契約をオンバランス化する「使用権モデル」が採用されることです。これにより、これまでオフバランス処理が可能だったオペレーティング・リースも、資産(使用権資産)と負債(リース負債)としてBSに計上する必要があります。

使用権資産とリース負債の計上方法

リース契約を開始する際、借手はまず「リース負債」と「使用権資産」を認識します。それぞれの計上方法は以下の通りです。

1. リース負債の計上

リース負債は、リース開始日以降に支払うリース料総額を、一定の割引率を用いて現在価値に割り引いて計算します。この割引率は、原則としてリース契約で定められた「貸手の計算に用いられている利率」を使用しますが、それが不明な場合は企業の「追加借入利子率」を用います。

2. 使用権資産の計上

使用権資産は、上記で算定したリース負債の額を基礎として、以下の費用を加算して計算します。

  • リース負債の当初測定額
  • リース契約に関連して支払った直接的な費用(付随費用)
  • 原状回復義務にかかる資産除去債務
  • リース開始日より前に支払ったリース料

これにより、リース開始日には以下のような仕訳が行われます。

借方貸方
使用権資産 XXX円リース負債 XXX円

減価償却費と支払利息の計算

資産計上後、損益計算書(PL)に計上される費用も変わります。旧基準のオペレーティング・リースでは「支払リース料」として費用計上されていましたが、新基準では「減価償却費」と「支払利息」に分解して計上します。

項目旧基準新基準
費用科目支払リース料(販売費及び一般管理費など)減価償却費(販売費及び一般管理費など)
支払利息(営業外費用)
費用の推移リース期間中、原則として定額リース期間の初期に費用が大きく、後期になるほど小さくなる(費用前倒し計上)

減価償却費:計上した「使用権資産」を、原則としてリース期間にわたって定額法で償却します。
支払利息:計上した「リース負債」の期末残高に割引率を乗じて計算します。負債残高は返済とともに減少するため、支払利息も期間の経過とともに減少していきます。

貸手の会計処理は原則変更なし

借手側の会計処理が大きく変わる一方で、貸手側の会計処理については、現行の日本基準から原則として変更はありません。引き続き、リース契約を「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」に分類し、それぞれに応じた会計処理を行います。これは、国際的な会計基準であるIFRS16号が貸手の処理を変更しなかったことや、実務上の負担を考慮した結果です。

財務諸表へのインパクト

借手の会計処理の変更は、企業の財務諸表と主要な財務指標に以下のような影響を与えます。特にこれまでオペレーティング・リースを多用してきた企業ほど、その影響は大きくなります。

財務諸表・指標影響理由
貸借対照表(BS)総資産と負債がともに増加使用権資産(資産)とリース負債(負債)が計上されるため。
自己資本比率低下する傾向総資産が増加する一方で自己資本は変わらないため。
損益計算書(PL)営業利益・EBITDAは増加する傾向費用が「支払リース料(販管費)」から「減価償却費(販管費)」と「支払利息(営業外費用)」に変わるため。
キャッシュ・フロー計算書(CF)営業CFは増加、財務CFは減少する傾向支払リース料(営業CF)が、利息支払額(営業CF)と元本返済額(財務CF)に分解されるため。
ROA(総資産利益率)低下する傾向総資産が増加するため。
D/Eレシオ(負債資本倍率)悪化する傾向負債が増加するため。

このように、新リース会計基準は企業の財政状態や経営成績の「見え方」を大きく変える可能性があります。特に、EBITDAや営業キャッシュ・フローといった指標が改善する一方で、自己資本比率やD/Eレシオが悪化するため、金融機関や投資家などのステークホルダーへの説明が重要になります。

【特に重要】中小企業への影響と実務上の特例措置

中小企業の新リース会計基準 対応フロー Q. 中小企業の会計指針を 適用していますか? YES 従来の処理を継続 (賃貸借処理 / オフバランス) ※当面の間、強制適用なし NO Q. 以下の特例に該当しますか? 短期リース(12ヶ月以内) 少額リース(5千ドル以下等) YES 簡便的な取扱い (賃貸借処理 / オフバランス) ※実務負担を軽減可能 NO 原則的な会計処理 (資産・負債計上 / オンバランス)

新リース会計基準の導入は、大企業だけでなく中小企業にとっても重要な変更です。しかし、すべての企業が一律に複雑な会計処理を求められるわけではありません。実務上の負担を考慮し、特に中小企業向けにいくつかの特例措置や簡便的な取扱いが用意されています。この章では、中小企業が最も知りたい影響と、実務を大幅に簡素化できる特例措置について詳しく解説します。

中小企業の会計指針における取り扱い

まず、日本の中小企業の多くが会計処理の拠り所としている「中小企業の会計に関する指針」(中小会計指針)における位置づけを理解することが重要です。

結論から言うと、現時点では、中小会計指針において新リース会計基準の適用は強制されていません。つまり、中小会計指針を適用している企業は、当面の間、従来通りのリース会計処理(所有権移転外ファイナンス・リース取引について、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行う方法)を継続することが認められています。

ただし、これは恒久的な措置ではない可能性も考慮すべきです。将来的には中小会計指針が改訂され、新基準への準拠が求められる日が来るかもしれません。また、親会社が上場企業である場合や、金融機関からの融資条件として新基準に準拠した財務諸表の提出を求められるケースも考えられます。自社の状況に合わせて、いつから対応が必要になるかを見極めることが肝心です。

実務を簡素化する重要論点と注意点

仮に新リース会計基準を適用する場合でも、実務負担を軽減するための「簡便的な取扱い」が複数認められています。これらを活用することで、経理担当者の作業工数を大幅に削減できる可能性があります。特に重要な2つの特例措置と、その他の簡便法について見ていきましょう。

短期リースの特例

リース期間が12ヶ月以内のリースについては、「短期リース」として扱われ、新基準の原則的な会計処理(使用権資産とリース負債の計上)が免除されます。これは、資産計上や減価償却計算といった煩雑な処理を回避できる、非常に強力な特例です。

  • 対象: リース期間が12ヶ月以内のリース契約(例: 期間1年のオフィス機器レンタル、短期プロジェクト用のPCリースなど)
  • 会計処理: 使用権資産・リース負債を計上せず、支払リース料を発生時に費用として計上(従来の賃貸借処理と同様)。
  • 注意点: 契約上、借手がリース資産の購入オプションを有しており、それを行使することが合理的に確実である場合は、この特例の対象外となります。形式的に12ヶ月以内であっても、実質的に長期のリースと見なされる契約には適用できないため注意が必要です。

少額リースの特例

リースする資産そのものの価値が低い「少額リース」についても、短期リースと同様に資産計上が免除されます。どの程度の金額を「少額」とするかについては、企業の判断に委ねられている部分が大きいですが、国際的な基準(IFRS16号)では新品時の価値が5,000米ドル以下という目安が示されており、多くの企業がこれを参考にしています。

  • 対象: PC、スマートフォン、複合機、オフィス家具など、個々の資産価値が低いリース。
  • 会計処理: 短期リース同様、使用権資産・リース負債を計上せず、支払リース料を費用処理。
  • 注意点: この判断は、リース契約全体ではなく、リースされている個々の資産単位で行うのが原則です。例えば、1台5万円のタブレットを100台(合計500万円)リースする場合でも、個々のタブレットが少額であると判断すれば、この特例を適用できる可能性があります。ただし、企業の資産管理の方針と整合性を取ることが重要です。

これらの特例措置をまとめたものが、以下の表です。

項目短期リースの特例少額リースの特例
判定基準リース期間(12ヶ月以内)リース資産の価値(例: 新品時5,000米ドル以下)
会計処理使用権資産・リース負債を計上せず、支払額を費用計上(オフバランス)
メリット資産管理、減価償却計算、利息計算などの実務負担を大幅に軽減
適用時の注意点購入オプションの有無など、実質的なリース期間で判断する必要がある。個々の資産単位で判断する。企業全体で一貫した金額基準を設けることが望ましい。

これらの特例を適切に活用できるかどうかで、新リース会計基準への対応負荷は大きく変わります。自社で締結しているリース契約を棚卸しし、どの契約が特例の対象となるかを事前に把握しておくことが、スムーズな移行の鍵となります。

新リース会計基準への対応準備とシステム導入

新リース会計基準の適用は、経理部門だけでなく、契約管理に関わる全部門に影響を及ぼす可能性があります。早期に準備を開始し、スムーズな移行を目指すことが重要です。ここでは、具体的な準備ステップと、業務効率化に不可欠なシステム導入について解説します。

今から始めるべき3つの準備ステップ

新リース会計基準への対応は、計画的に進める必要があります。まずは以下の3つのステップから着手しましょう。これらのステップは、自社の状況を正確に把握し、適切な会計方針を決定するための基礎となります。

ステップ主なタスクポイント
ステップ1:リース契約の網羅的な把握社内に存在するすべてのリース契約(賃貸借契約を含む)をリストアップし、契約情報を一元管理する。契約書だけでなく、請求書や稟議書なども確認し、これまで費用処理していた賃貸借契約の中に、新基準でリースに該当するものがないかを洗い出すことが重要です。契約期間、リース料、更新オプション、解約オプションなどの詳細情報を整理します。
ステップ2:会計方針の決定短期リースや少額リース(重要性の低いリース)の特例適用の有無や、その具体的な基準(金額、期間)を決定する。実務上の負担を軽減するため、多くの企業が特例の適用を検討します。自社の事業規模やリース契約の実態に合わせて、合理的で継続可能な会計方針を策定する必要があります。この方針は、監査法人とも事前に協議しておくことが望ましいです。
ステップ3:業務フローと体制の構築リース契約の識別、資産・負債の計算、仕訳計上、情報開示までの一連の業務プロセスを再設計し、担当部署や役割分担を明確にする。契約締結時にリースに該当するかを判断するプロセスを誰が担うのか、計算に必要な情報をどのように収集・管理するのかなど、部門横断的な協力体制の構築が不可欠です。新しい業務フローに基づき、マニュアルの整備や社内研修も計画しましょう。

Excel管理の限界とプロシップなど専門システムの必要性

新リース会計基準の適用により、リース契約の管理と会計処理は格段に複雑化します。従来のExcelによる管理では対応が困難になるケースが多く、専門システムの導入が現実的な解決策となります。

Excel管理の限界

契約件数が少ない場合はExcelでの管理も可能かもしれませんが、多くの企業にとっては以下のような限界があります。

  • 計算の複雑さ:使用権資産やリース負債の現在価値計算、減価償却費と支払利息の按分計算など、複雑な計算を手作業で行うには限界があり、ミスが発生しやすくなります。
  • 属人化のリスク:特定の担当者しか理解できない複雑な関数やマクロが組まれたファイルは、異動や退職によってブラックボックス化するリスクを抱えています。
  • 契約変更への対応:契約期間の変更、リース料の改定、中途解約などが発生した場合、過去に遡って再計算を行う必要があり、Excelでの対応は非常に煩雑です。
  • 内部統制と監査対応:Excel管理では、変更履歴の追跡やアクセス権の管理が難しく、内部統制の観点から脆弱です。監査の際に、計算根拠や承認プロセスの証跡を十分に提示できない可能性があります。

専門システムの必要性

上記のような課題を解決するため、多くの企業がリース管理に特化した専門システムの導入を検討しています。株式会社プロシップが提供する「ProPlus」をはじめとする専門システムは、以下のようなメリットをもたらします。

  • 業務の自動化と効率化:リース契約情報を登録するだけで、使用権資産やリース負債の計算から、毎月の仕訳データの自動生成までを一貫して行えます。これにより、経理担当者の手作業が大幅に削減されます。
  • 正確性の担保:複雑な会計基準のロジックがシステムに組み込まれているため、計算ミスを防ぎ、会計処理の正確性を担保します。法改正にもアップデートで対応可能です。
  • 一元管理と情報共有:すべてのリース契約情報をデータベースで一元管理し、関連部署が必要な情報にいつでもアクセスできる環境を構築できます。
  • 内部統制の強化と監査対応の円滑化:システムは、誰がいつ何を操作したかのログを記録し、承認ワークフロー機能も備えているため、内部統制の強化に直結します。監査の際も、必要なデータを迅速かつ正確に提出できます。

新リース会計基準への対応は、単なる会計処理の変更ではなく、リース契約管理のあり方そのものを見直す良い機会です。自社の状況を分析し、Excel管理の限界を見極めた上で、将来を見据えたシステム導入を積極的に検討することが、持続可能な管理体制の構築につながります。

まとめ

本記事では、新リース会計基準の概要から実務上の影響、具体的な対応策までを解説しました。最大の変更点は、国際会計基準IFRS16号との差異を解消するため、原則としてすべてのリース取引を資産・負債として計上する「オンバランス化」が求められる点です。これにより、企業の貸借対照表は大きく変動し、財務指標にも影響が及びます。

借手は新たに「使用権資産」と「リース負債」を計上し、減価償却費と支払利息を費用認識する会計処理が必要となります。一方で、日本の実情に配慮し、重要性の低いリースや短期リースには簡便的な処理が認められています。特に中小企業は、当面「中小企業の会計に関する指針」に沿った従来の会計処理を継続できるため、過度に心配する必要はありません。

しかし、適用対象となる企業は、リース契約の網羅的な把握や会計方針の決定といった準備が不可欠です。契約数が多い場合、Excelでの管理は限界があるため、プロシップのような専門システムの導入も視野に入れ、早期に準備を進めることが重要です。

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