「システムが突然ダウンした」「ユーザーからの問い合わせが殺到している」など、ITサービスの予期せぬトラブル対応に追われていませんか?こうしたインシデントへの対応を場当たり的に行うと、ビジネスに深刻な影響を及ぼしかねません。効果的なインシデント管理の鍵は、国際的なベストプラクティスであるITILに基づいた「プロセスの標準化」と「適切なツールの活用」にあります。本記事では、インシデント管理の目的や問題管理との違いといった基礎知識から、明日から実践できる具体的な5つのプロセス、そして自社に最適なツールを選ぶための比較ポイントまでを徹底解説します。この記事を読めば、インシデント管理の全体像を体系的に理解し、サービスの安定稼働と顧客満足度向上を実現するための具体的な方法がわかります。
インシデント管理とは ITサービスを正常に保つための活動
インシデント管理とは、ITサービスにおいて発生したインシデント(予期せぬ中断や品質低下)に対し、迅速な解決を図り、サービスを可能な限り早く正常な状態に復旧させるための一連の活動を指します。これは、ITサービスマネジメント(ITSM)の中核をなす重要なプロセスです。ビジネスへの影響を最小限に抑え、安定したサービス提供を維持することを目的としています。
例えば、「Webサイトが表示されない」「社内システムにログインできない」といった事象が発生した際に、その影響範囲を特定し、暫定的な回避策や恒久的な解決策を迅速に適用して、利用者が再びサービスを使えるようにすることがインシデント管理の役割です。
そもそもインシデントとは何か
IT分野における「インシデント」とは、ITサービスの正常な運用を妨げる、計画外のあらゆる出来事を指します。これには、サービスが完全に停止する「サービスの中断」だけでなく、「レスポンスが著しく遅い」「一部の機能が使えない」といった「サービス品質の低下」も含まれます。
重要なのは、インシデントは必ずしも「障害」や「故障」といったハードウェアやソフトウェアの不具合だけが原因とは限らない点です。例えば、アクセス集中によるパフォーマンス低下や、操作ミスによるデータ不整合などもインシデントとして扱われます。利用者の業務に支障をきたす可能性のある事象は、すべてインシデントと捉えるのが一般的です。
インシデント管理と問題管理の明確な違い
インシデント管理と非常によく似た言葉に「問題管理」があります。この二つは密接に関連していますが、その目的とアプローチは明確に異なります。インシデント管理は「今起きている火事を消す」活動、問題管理は「火事が二度と起きないように原因を調査し対策する」活動と例えることができます。
インシデント管理の最優先事項は、ビジネスへの影響を最小限に抑えるための迅速なサービス復旧です。そのため、根本原因の特定よりも、ワークアラウンド(暫定的な回避策)の適用が優先されることもあります。一方、問題管理は、インシデントの根本原因を特定し、恒久的な解決策を講じることで再発を防止することを目的としています。複数のインシデントに共通する未知の原因を「問題」として定義し、中長期的な視点で解決に取り組みます。
両者の違いを以下の表にまとめます。
| 項目 | インシデント管理 | 問題管理 |
|---|---|---|
| 目的 | サービスの迅速な復旧とビジネス影響の最小化 | インシデントの根本原因の特定と恒久的な解決による再発防止 |
| アプローチ | 対症療法的(今起きている事象への対応) | 原因療法的(原因の追究と対策) |
| 時間軸 | 緊急・短期的 | 分析・中長期的 |
| 主な活動 | 記録、分類、優先順位付け、診断、エスカレーション、解決、クローズ | 問題の特定、根本原因分析(RCA)、エラーコントロール、問題のクローズ |
ITILにおけるインシデント管理の位置づけ
ITIL(Information Technology Infrastructure Library)は、ITサービスマネジメントにおける成功事例やベストプラクティスを体系的にまとめたフレームワークです。世界中の多くの企業や組織が、IT運用の標準モデルとしてITILを採用しています。
このITILにおいて、インシデント管理は最も重要で基本的なプロセスの一つとして位置づけられています。最新のITIL 4では、34の「マネジメントプラクティス」の一つとして定義されており、サービスの価値を創造・提供・サポートする「サービスバリューチェーン」の活動全般に関わります。
ITILに準拠したインシデント管理を導入することは、属人化しがちな対応プロセスを標準化し、組織全体として体系的かつ効率的にサービス品質を維持・向上させるための礎となります。ITILの考え方を理解し、自社の状況に合わせて適用していくことが、効果的なインシデント管理体制を構築する上で極めて重要です。
インシデント管理の目的と導入するメリット
インシデント管理は、単に発生したシステム障害に対応するだけの受け身の活動ではありません。ビジネスを安定的に継続させ、さらには成長させるための戦略的なITサービスマネジメントの中核をなすものです。適切にインシデント管理を導入・運用することで、企業は多くのメリットを享受できます。ここでは、インシデント管理がなぜ重要なのか、その目的と具体的なメリットを3つの観点から解説します。
迅速なサービス復旧とビジネス影響の最小化
インシデント管理の最大の目的は、ITサービスを可能な限り迅速に正常な状態へ復旧させ、ビジネスへの悪影響を最小限に抑えることです。現代のビジネスにおいて、ITシステムの停止は売上機会の損失、従業員の生産性低下、ブランドイメージの毀損など、深刻なダメージに直結します。
例えば、次のようなインシデントが発生した場合、ビジネスには多大な影響が及びます。
| インシデントの例 | 想定されるビジネスへの影響 |
|---|---|
| ECサイトで決済ができない | 売上の直接的な損失、顧客の離脱(カゴ落ち) |
| 社内業務システム(ERP/CRM)が停止する | 業務の停滞による全社的な生産性の低下、データ入力の遅延 |
| 顧客向けSaaSのレスポンスが著しく遅い | 顧客満足度の低下、解約率の上昇、SLA(サービスレベル合意)違反によるペナルティ |
| Webサイトの表示が崩れる | 企業ブランドイメージの低下、ユーザーの信頼喪失 |
インシデント管理のプロセスが確立されていれば、インシデントの検知から原因の特定、復旧作業までをスムーズに進めることができます。これにより、サービスの停止時間を短縮し、機会損失や信用の失墜といったビジネスリスクを最小化することが可能になります。
対応品質の標準化と属人化の防止
インシデント対応が特定の担当者の経験や勘に依存している状態、いわゆる「属人化」は多くのリスクをはらんでいます。その担当者が不在の場合に対応が大幅に遅れたり、対応者によって品質にばらつきが生じたりするからです。また、個人のノウハウが組織に共有されず、ナレッジとして蓄積されないという問題もあります。
インシデント管理を導入し、対応フローを整備することで、これらの課題を解決できます。対応プロセスを標準化することで、担当者のスキルや経験に依存しない、安定した高品質な対応を実現します。誰が対応しても、定められた手順と優先度に従って、一貫性のあるサービスを提供できるようになるのです。
これにより、以下のようなメリットが生まれます。
- 対応の迅速化:次に何をすべきかが明確なため、迷わずに行動できる。
- 品質の均一化:担当者ごとの対応のブレがなくなり、顧客に安心感を与える。
- ナレッジの蓄積:対応履歴や解決策が記録されるため、同様のインシデントに素早く対処できる。
- 担当者の負担軽減:特定のエース社員への業務集中を防ぎ、チーム全体で対応できる体制を構築できる。
結果として、組織全体のインシデント対応能力が底上げされ、よりレジリエント(強靭)なITサービス運用が可能となります。
顧客満足度と信頼性の向上
ITサービスでインシデントが全く発生しない、ということは現実的ではありません。重要なのは、インシデントが発生した際に、いかに迅速かつ誠実に対応できるかです。適切なインシデント管理は、最終的に顧客満足度と企業への信頼性を高めることにつながります。
迅速な復旧はもちろんのこと、インシデントの発生状況や復旧見込みを適切に顧客へ通知することも重要です。たとえサービスが停止しても、透明性の高いコミュニケーションを行うことで、顧客の不安を和らげ、かえって信頼を得る機会にもなり得ます。
安定したサービス提供と誠実なインシデント対応は、顧客満足度を高め、企業のブランドイメージと信頼性を向上させる重要な要素です。特に、BtoBのサービスではSLA(サービスレベル合意)で定められた可用性を遵守することが契約の根幹となります。インシデント管理体制を強化することは、SLAを遵守し、顧客との長期的なパートナーシップを築くための必須条件と言えるでしょう。
ITILに準拠したインシデント管理のプロセスとフロー
インシデント管理を効果的に機能させるためには、場当たり的な対応ではなく、体系化されたプロセスに沿って進めることが不可欠です。ここでは、ITサービスマネジメントのベストプラクティス集である「ITIL(Information Technology Infrastructure Library)」で定義されている、標準的なインシデント管理のプロセスとフローを5つのステップに分けて具体的に解説します。
ステップ1 インシデントの受付と記録
インシデント管理の最初のステップは、ユーザーや監視システムからインシデントの発生を検知し、受け付けることです。電話、メール、チャット、専用のポータルサイトなど、様々なチャネルからの報告をサービスデスクなどの「単一窓口(SPOC: Single Point of Contact)」で一元的に集約します。
報告を受けたら、インシデント管理ツールに正確な情報を記録します。この記録は、後の対応や分析の基礎となる非常に重要な情報です。主な記録項目には以下のようなものがあります。
- インシデントの一意な識別番号(ID)
- 報告者の氏名、所属、連絡先
- インシデントの発生日時
- 利用しているITサービスや機器(構成アイテム)
- インシデントの具体的な内容(エラーメッセージ、症状など)
- 対応チャネル(電話、メールなど)
すべてのインシデントを漏れなく記録し、対応状況を可視化することが、組織的なインシデント管理の第一歩となります。
ステップ2 インシデントの分類と優先度付け
次に、記録されたインシデントをあらかじめ定義されたカテゴリに基づいて分類します。例えば、「ハードウェア障害」「ソフトウェアの不具合」「ネットワーク接続の問題」「アカウントに関する問い合わせ」といったカテゴリです。分類を行うことで、どの専門チームが対応すべきかを迅速に判断でき、スムーズなエスカレーションが可能になります。
分類と同時に、インシデントの「優先度」を決定します。優先度は、ビジネスへの「影響度」と対応の「緊急度」という2つの軸から客観的に判断するのが一般的です。これにより、限られたリソースを最も重要なインシデントから割り当てることができます。
優先度付けは、以下のようなマトリクスを用いて標準化することが推奨されます。
| 影響度:高 (基幹システム停止など) | 影響度:中 (一部門の業務停滞など) | 影響度:低 (個人PCの不具合など) | |
|---|---|---|---|
| 緊急度:高 (即時対応が必要) | 最優先 | 高 | 中 |
| 緊急度:中 (通常業務時間内に対応) | 高 | 中 | 低 |
| 緊急度:低 (計画的な対応が可能) | 中 | 低 | 低 |
このマトリクスに基づいて優先度を決定することで、担当者の主観による判断を防ぎ、対応の公平性と一貫性を保ちます。
ステップ3 初期調査と診断
優先度付けが終わると、サービスデスクの担当者(一次対応者)による初期調査と診断が開始されます。この段階の目標は、ナレッジベース(過去の対応事例やFAQを蓄積したデータベース)や既知のエラー情報を参照し、迅速にインシデントを解決することです。
担当者はユーザーにヒアリングを行い、状況の再現を試みるなどして、インシデントの具体的な原因を切り分けます。パスワードのリセットや簡単な設定変更など、過去に解決実績のあるインシデントであれば、この段階で解決できることが多く、これを「初回解決率(FCR: First Call Resolution)」と呼びます。初回解決率を高めることは、ユーザー満足度の向上と運用コストの削減に直結します。
初期調査で解決できないと判断された場合は、二次対応チームがスムーズに調査を引き継げるよう、調査内容や試したこと、収集したログなどの情報を正確に記録しておくことが重要です。
ステップ4 エスカレーションと解決
初期調査で解決に至らなかったインシデントは、より専門的な知識や権限を持つ二次・三次対応チームへと引き継がれます。これを「エスカレーション」と呼びます。
エスカレーションには、主に2つの種類があります。
- 機能的エスカレーション:ネットワーク、サーバー、アプリケーションなど、特定の技術分野の専門チームへ技術的な調査・解決を依頼すること。
- 階層的エスカレーション:SLA(サービスレベル合意)で定められた目標時間内に解決できない場合や、広範囲に重大な影響を及ぼす可能性がある場合に、マネージャーや上位の役職者へ報告し、意思決定や追加リソースの投入を仰ぐこと。
エスカレーションを受けた担当者は、詳細な調査を行い、解決策を特定・実行します。この際、恒久的な解決策がすぐに見つからない場合は、業務への影響を最小限に抑えるための暫定的な「回避策(ワークアラウンド)」をユーザーに提供することも重要な対応です。根本原因の解決は、後続の「問題管理」プロセスに引き継がれることもあります。
解決策が適用され、サービスが正常な状態に復旧したことを確認したら、サービスデスクはユーザーにその旨を報告し、問題が解決したことの同意を得ます。
ステップ5 インシデントのクローズと報告
ユーザーから解決の同意を得られたら、インシデント管理プロセスは最終段階の「クローズ」へと進みます。インシデントをクローズする前に、担当者はインシデント管理ツールに最終的な対応記録を完成させなければなりません。
この記録には、以下の情報が含まれている必要があります。
- インシデントの最終的な分類
- 根本原因(特定できた場合)
- 実行した解決策または回避策の詳細
- 対応にかかった総時間
- 対応に関わった担当者やチーム
対応内容を正確に記録し、ナレッジとして蓄積することで、将来同様のインシデントが発生した際に、より迅速かつ効率的に対応できるようになります。また、クローズされたインシデントのデータは、サービスの品質改善や問題管理プロセスのための重要なインプットとなります。必要に応じてインシデント報告書を作成し、関係部署や経営層へ共有することで、ITサービスの現状と課題に対する共通認識を醸成します。
効果的なインシデント管理を実現する3つのポイント
インシデント管理のプロセスを定義するだけでは、その効果を最大限に引き出すことはできません。プロセスを円滑に運用し、継続的に改善していくためには、それを支える「体制」「目標」「知識」が不可欠です。ここでは、効果的なインシデント管理を実現するために欠かせない3つの重要なポイントを解説します。
インシデント管理体制の構築と役割分担
インシデントが発生した際に、誰が何をすべきかが不明確では、迅速な対応は望めません。責任の所在を明確にし、組織として一貫した対応を取るための体制構築が最初のステップとなります。明確な役割分担は、対応の遅延や混乱を防ぎ、スムーズなエスカレーションを可能にします。
一般的に、インシデント管理体制は以下のような役割で構成されます。自社の規模や状況に合わせて、これらの役割を定義し、担当者を割り当てることが重要です。
| 役割 | 主な責務 |
|---|---|
| サービスデスク(一次対応窓口) | ユーザーからの問い合わせ(インシデント報告)を一元的に受け付け、記録します。既知の解決策を用いて対応し、解決できない場合は二次対応チームへエスカレーションします。 |
| 二次対応チーム | ネットワーク、サーバー、アプリケーションなど、各分野の専門知識を持つ技術者チームです。サービスデスクからエスカレーションされたインシデントの原因調査と解決を担当します。 |
| インシデントマネージャー | インシデント管理プロセス全体の責任者です。特に影響の大きい「重大インシデント」発生時には、対応の指揮を執り、関係者への報告やコミュニケーションを統括します。 |
これらの役割と責任範囲を明確に定義し、全関係者で共有することで、インシデント発生時に迷うことなく、各担当者が自身の役割を遂行できるようになります。
SLA(サービスレベル合意)の設定と遵守
SLA(Service Level Agreement)とは、サービスの提供者と利用者の間で交わされる、サービスの品質に関する合意です。インシデント管理においては、「いつまでに対応を開始し、いつまでに復旧させるか」という目標を具体的に定めることで、対応品質の基準となります。
SLAを設定することで、以下のメリットが生まれます。
- 対応の優先順位が明確になり、リソースを適切に配分できる
- サービス利用者との期待値を調整し、満足度を向上させる
- 対応状況を客観的な指標で評価し、継続的な改善につなげられる
SLAでは、インシデントの優先度(影響度と緊急度から判断)に応じて、目標となる時間を設定するのが一般的です。以下にSLAの設定例を示します。
| 優先度 | 定義例 | 目標応答時間 | 目標復旧時間 |
|---|---|---|---|
| 高 | 基幹システム停止など、事業全体に甚大な影響を及ぼす | 15分以内 | 4時間以内 |
| 中 | 一部門の業務が停止するなど、影響範囲が限定的 | 1時間以内 | 8営業時間以内 |
| 低 | 代替手段があり、業務への影響が軽微 | 4営業時間以内 | 3営業日以内 |
重要なのは、非現実的な目標を立てるのではなく、自社のリソースで実現可能な範囲でSLAを設定し、その遵守状況を定期的にモニタリングして改善していくことです。
ナレッジベースの構築と活用
インシデント対応で得られた知見やノウハウは、組織にとって非常に価値のある資産です。これらの情報を形式知として蓄積・共有する仕組みが「ナレッジベース」です。過去の対応履歴や解決策を誰もが参照できるようにすることで、属人化を防ぎ、組織全体の対応力を底上げします。
効果的なナレッジベースは、以下のような好循環を生み出します。
- インシデント対応の過程や解決策を記録する。
- 蓄積されたナレッジを検索し、類似インシデントの解決に役立てる。
- 解決までの時間が短縮され、対応品質が向上する。
- 新たな知見がナレッジとして追加され、さらにデータベースが充実する。
ナレッジベースを形骸化させないためには、単に情報を蓄積するだけでは不十分です。インシデントクローズ時に対応履歴を記録することをプロセスに組み込み、定期的に内容の陳腐化がないか見直すことが重要です。また、よくある質問(FAQ)として整理し、サービスデスクの一次解決率向上や、エンドユーザー自身の自己解決を促すことにも活用できます。ナレッジの活用は、インシデント管理の効率と品質を飛躍的に高めるための鍵となります。
インシデント管理ツールの選び方と比較ポイント
インシデント管理の品質と効率は、使用するツールに大きく左右されます。Excelやスプレッドシート、メールでの管理には限界があり、対応漏れや情報共有の遅れ、属人化といった問題を引き起こしかねません。ここでは、効果的なインシデント管理を実現するためのツールの選び方と、比較検討すべき重要なポイントを解説します。
インシデント管理にツールを導入すべき理由
インシデント管理に専用ツールを導入することは、単なる業務効率化以上の価値をもたらします。手作業による管理では見過ごされがちな多くの課題を解決し、ITサービス全体の安定性向上に貢献します。
ツールを導入すべき主な理由は以下の通りです。
- 情報の一元管理と可視化: 発生したインシデントの受付からクローズまで、すべての情報を一元的に管理できます。誰が、いつ、何に対応しているのかをダッシュボードなどで可視化し、対応漏れや重複対応を防ぎます。
- プロセスの標準化と自動化: ITILに準拠したワークフローを構築し、対応プロセスを標準化できます。担当者の割り当てやステータス更新、関係者への通知などを自動化することで、対応の迅速化と品質の均一化を実現します。
- ナレッジの蓄積と活用: 過去のインシデント対応履歴や解決策がナレッジとして蓄積されます。これにより、類似のインシデントが発生した際に迅速な解決が可能となり、担当者のスキルレベルに依存しない対応が実現します。
- SLAの遵守と管理: サービスレベル合意(SLA)で定められた対応時間や解決時間を監視し、期限が近づくとアラートを出す機能により、SLAの遵守率を高めることができます。
- データに基づいた改善活動: 蓄積されたデータを基に、インシデントの発生傾向や対応時間、解決率などを分析するレポートを作成できます。この分析結果は、根本原因の特定や再発防止策の立案といった「問題管理」のプロセスにも繋がります。
ツール選定で失敗しないための5つの確認項目
自社に最適なインシデント管理ツールを選ぶためには、いくつかの重要な視点から比較検討する必要があります。価格や知名度だけで選んでしまうと、現場の業務にフィットせず、かえって非効率になることも少なくありません。ここでは、ツール選定で失敗しないための5つの確認項目を解説します。
必要な機能が網羅されているか
まず、自社のインシデント管理プロセスに必要な機能が備わっているかを確認することが最も重要です。基本的な機能から、より高度な管理を実現するための機能まで、以下の表を参考にチェックしましょう。
| 機能カテゴリ | 主な機能 | 確認すべきポイント |
|---|---|---|
| チケット管理 | インシデントの起票、ステータス管理、担当者割り当て、対応履歴の記録 | 入力フォームをカスタマイズできるか。対応履歴が見やすいか。 |
| ワークフロー・自動化 | 優先度に応じた担当者の自動割り当て、関係者への自動通知、SLA期限のアラート | 自社の運用ルールに合わせて柔軟にワークフローを設定できるか。 |
| ナレッジ管理 | 過去のインシデントと解決策のデータベース化、FAQ作成、キーワード検索 | チケット作成時に類似のナレッジをサジェストしてくれるか。 |
| レポート・ダッシュボード | 対応件数、解決時間、担当者別パフォーマンスなどの可視化 | 定型レポートだけでなく、独自の分析軸でレポートを作成できるか。 |
| SLA管理 | SLA目標時間の設定、計測、警告通知 | 複数のサービスレベルに合わせてSLAを個別に設定できるか。 |
自社の業務プロセスを洗い出し、どの機能が必須で、どの機能があればより便利になるかを明確にしておくことが、ツール選定の第一歩です。
直感的な操作性と視認性
インシデント管理ツールは、IT部門の担当者が日常的に使用するものです。そのため、誰でも直感的に操作できる分かりやすいユーザーインターフェース(UI)と、必要な情報を一目で把握できる視認性の高いダッシュボード(UX)が不可欠です。操作が複雑だと、担当者にストレスを与えるだけでなく、ツールの利用が定着せず、宝の持ち腐れになってしまう可能性があります。
選定時には、無料トライアルやデモンストレーションを積極的に活用し、実際に操作感を試すことを強く推奨します。特に、チケットの起票、情報の検索、レポートの確認といった基本的な操作がスムーズに行えるかを確認しましょう。
他システムとの連携は可能か
インシデント管理は単独で完結する業務ではありません。効率的な運用のためには、すでに社内で利用している他のシステムとの連携が鍵となります。
- チャットツール連携(例: Slack, Microsoft Teams): チャットから直接インシデントを起票したり、対応状況の通知を受け取ったりできると、コミュニケーションが円滑になります。
- 監視ツール連携(例: Zabbix, Datadog): システムの異常を検知した際に、自動でインシデントを起票する連携は、インシデントの発見を早め、迅速な初動対応に繋がります。
- 開発管理ツール連携(例: Jira, Redmine): インシデントがソフトウェアのバグに起因する場合、開発チームが利用するツールにシームレスに課題を連携できると、部門間の連携がスムーズになります。
API(Application Programming Interface)が公開されているか、どのような外部ツールと標準で連携できるかを確認し、自社のIT環境全体で業務を効率化できるツールを選びましょう。
サポート体制は充実しているか
ツールの導入時や運用開始後に問題が発生した際、迅速かつ的確なサポートを受けられるかは非常に重要です。特に海外製のツールの場合、サポート窓口が英語のみであったり、時差によって対応が遅れたりするケースもあります。
以下の点を確認し、安心して利用できるサポート体制が整っているかを見極めましょう。
- サポートの対応言語(日本語対応は可能か)
- 問い合わせ可能な時間帯(日本のビジネスタイムに対応しているか)
- 問い合わせ方法(電話、メール、チャットなど)
- マニュアルやFAQサイトの充実度
- 導入時の設定支援やトレーニングサービスの有無
国産ツールや国内に強力なサポート拠点を持つベンダーは、日本の商習慣を理解した手厚いサポートが期待できる-mark>というメリットがあります。
費用対効果は高いか
ツールの導入費用は、初期費用と月額(または年額)のランニングコストで構成されます。料金体系は、利用ユーザー数に応じた課金、機能に応じた課金など様々です。単に価格が安いという理由だけで選ぶのではなく、自社の利用規模や必要な機能を考慮し、複数のプランを比較検討することが重要です。
そして最も大切なのは、投資するコストに対して、どれだけの効果が見込めるかという「費用対効果」の視点です。ツールの導入によって削減できる対応工数、短縮できるサービス停止時間(機会損失の低減)、向上する顧客満足度などを総合的に評価し、自社にとって最も価値のある投資となるツールを選びましょう。
おすすめのITSMツール「SHERPA SUITE」
ここまで解説してきた選定ポイントを踏まえた上で、おすすめのITSM(ITサービスマネジメント)ツールの一つとして、国産の「SHERPA SUITE(シェルパスイート)」をご紹介します。
SHERPA SUITEは、ITILに準拠したインシデント管理、問題管理、変更管理などのプロセスを標準機能として搭載しており、ITサービス運用全体の最適化を支援します。特にインシデント管理においては、以下のような特徴があります。
- ITIL準拠のプロセス: インシデントの受付からクローズまで、ITILのベストプラクティスに基づいたプロセスが設計されており、スムーズに本格的なインシデント管理を始めることができます。
- 直感的で分かりやすいUI: 国産ツールならではの、日本のユーザーに馴染みやすい画面設計が特徴です。ドラッグ&ドロップによるワークフロー設定など、専門知識がなくても直感的に操作できます。
- 柔軟な連携機能: メール連携やAPI連携に対応しており、既存の監視ツールやチャットツールと組み合わせることで、業務プロセスを自動化・効率化することが可能です。
- 手厚い国産サポート: 導入前のコンサルティングから導入後の運用サポートまで、経験豊富な日本のスタッフによる手厚い支援を受けられます。日本語のドキュメントやFAQも充実しており、安心して利用できます。
- コストパフォーマンス: ユーザー数に応じた分かりやすい料金体系で、スモールスタートから大規模利用まで、企業の成長に合わせて柔軟にプランを選択できます。
インシデント管理ツールの導入を検討しているものの、どのツールを選べば良いか分からない、あるいは海外製ツールはハードルが高いと感じている企業にとって、SHERPA SUITEは有力な選択肢の一つとなるでしょう。
まとめ
本記事では、インシデント管理の基本的な概念から、ITILに準拠した具体的なプロセス、そして成功に導くポイントまでを網羅的に解説しました。インシデント管理は、単なる障害対応ではなく、ITサービスを安定稼働させ、ビジネスへの影響を最小限に抑えるための不可欠な活動です。
その目的は、迅速なサービス復旧を通じて顧客満足度を向上させることにあります。受付からクローズまでの一連のプロセスを標準化し、SLA(サービスレベル合意)を遵守することで、対応品質の均一化と属人化の解消が期待できます。また、問題管理と明確に区別することで、根本原因の解決にも繋がります。
効果的なインシデント管理を実現するためには、ナレッジベースの活用や適切なツールの導入が結論として重要です。ツールは情報の一元管理やプロセスの自動化を支援し、担当者の負担を軽減します。この記事を参考に、自社に最適なインシデント管理体制の構築とツールの選定を進め、事業の継続性と信頼性を高めていきましょう。